裂地を裁断するなどの表装作業では、主に写真のような丸包丁を使います。それは、丸い刃物の方が切り口が綺麗であり、糸のほつけなどを極力生じさせない様にするために使うのです。
丸包丁は、仕事の終わりに必ず砥石で研ぎます。約25年間、おそらく何千回も研いだら、こんなに小さくなってしまいました。(写真:右)この包丁は、表具師になった時に先代が買い揃えてくれた大切な道具の一つです。何度も、この包丁で誤って手指・足を切りました。
まだまだ研げば刃はつきますが、流石に刃物としては小さすぎて不安定なので、10年ほど前に柄を外し、刃をわざと落とし、筋引きとして使っています。
時々、小さくなった包丁を観ると、懐かしい思い出がフラッシュバックすることがあります。自分の半生を振り返り、「これで正しかったのだろうか?」などと漠然とした答えの存在しない疑問が浮かんできます。でも、間違いなくこの「丸包丁」が自分の生きた証だと自ら言い聞かせて、前に進んでいます。
今も、同じ鍛冶の「丸包丁」を愛用しています。同じように小さくなるまで使い続けます。