打ち刷毛

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打ち刷毛
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表装作業のうち、裏打ちに欠かすことのできない道具と言えば、「刷毛」。その刷毛の中でも、圧倒的な存在感を誇っているのが「打ち刷毛」です。打ち刷毛は、主に掛け軸の増裏打ち(ましうらうち)(2回目の裏打ち)や総裏打ち(最後の裏打ち)などの薄い糊を用いる時に使います。

掛け軸は巻いて保存するために、柔らかく仕上げなければなりません。そのためには、できる限り「薄い糊」で裏打ちをする必要があります。仮に接着力の強い「濃い糊」で裏打ちすると仕上がりが硬くなり、巻くと折れが生じる可能性があるために掛け軸として適しません。

では、「薄い糊」すなわち接着力の弱い糊で確実に裏打ち紙を接着させるには、どうしたら良いのでしょうか?

そのために、打ち刷毛で裏打ち紙を打って(叩いて)圧着させるのです。ものによりますが、全体を満遍なく2〜4回きちんと打ちます。私は、薄い裏打ち紙には軽く小さな打ち刷毛を使い、厚目の裏打ち紙には重い大きな打ち刷毛を使います。その方が、力加減などモードの切り替えができるような気がします。

一般に、打ち刷毛の寿命は30年〜40年と言われています。表具師人生50年〜60年とすれば、裏打ちの要となる打ち刷毛を交換する時期がいつか必ず訪れます。メインとなる打ち刷毛の交換は表具師にとって相当のストレスです。私が、複数の打刷毛を使い分けているのはこのストレスを避けるためです。おかげさまで、私の残りの表具師人生はこの4丁の打ち刷毛とともに最後まで無事に過ごせると思います。

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